夜のおつまみ

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カジノを作りたい論理

東京都の小池・新知事が、カジノ誘致に前向きなんだそうです。

www3.nhk.or.jp

東京都の小池知事は8日、NHKのインタビューに応じました。この中で小池知事は、国会で継続審議になっている国内のカジノ解禁に向けた法案に関連して「オリンピック・パラリンピックがあるが、恒常的に海外からのお客様を増やすべきだ。東京にさらに魅力をつけるため、あってもいいと思う」と述べ、外国人観光客の増加に向け東京の魅力を高めるためにもカジノを含む複合型観光施設の誘致に前向きな姿勢を示しました。

 

関心がある人にしか知られていないようですが、この記事にも書かれている通り、実は国会でも、カジノ施設を含む統合型リゾートを促進する法律がもう数年来審議されており、そろそろ成立してもよいくらいの時期になっています。

 

そういえば、西のほうでは、橋下・元大阪府知事がカジノ誘致に大変熱心でした。実に、この統合型リゾートの推進のための法案も、もとはといえば、日本維新の会(当時)と自民党と生活の党が共同で国会に議員提出した法律で、そのあたりにも橋下氏の影響を感じるとともに、もともとはこの3つの党は、そういう意味で経済政策的に共通の根っこを持っている*1ことが、統合型リゾート法案のことを思い出してもわかるという、大変興味深いものとなっています。

 

では、カジノに前向きな経済政策の発想って、どんなものでしょうか。

 

 小さな政府、強い財政

 カジノは、基本的に運営は企業に委託されます。政府は違法賭博の取り締まりと治安維持のみを主にその役割とします。国が認める賭博の中には、JRAのような特殊法人を設立する場合もありますが、日本の統合型リゾート法案では、カジノ施設の設置と運営は企業が行うことになります。そういう意味では、いわゆる「小さな政府」推奨の人たちの考えにきちんと沿った形になっています。

 

 そして、カジノからの収益は政府が一定程度持っていきます。国が賭博を禁止する中で、例外的に許可する施設から運営企業が暴利をむさぼるというのはいかにも利権的で、世論から受け入れがたいものです。運営企業にも一定の利益は落ちますが、政府が特例的に認めているという性質上、国が相当の資金を吸い上げる仕組みに必然的になります。

 

 いわば、カジノは、国の最小限の支出により、強力な税外収入を得られる仕組みです。

 

誰のお金を吸い上げるのか

 小池都知事ははっきり述べていますね。外国人観光客です。それも、小金を使う客ではありません。がっつりお金を使う太い客です。おぼえていますか、シンガポールとマカオのカジノで負けて、製紙会社一つを手放さざるをえなかったオーナー経営者を。あれくらいのお金をかけるお客を吸引したいわけです。そして、東京あたりに来るそういう太い客はどこの国にいるかというと、中東やアメリカやヨーロッパではありえません。モナコとかラスベガスとか、もっと面白いところがあるんだもん。であるならば、答えは一つ、中国です。より正確に言うと、東アジア各国の中国系富裕層です。

 

 基本的に東アジアのカジノはどこもそうで、マカオだってシンガポールだってマニラだって中国系ターゲットです。ソウルだけは中国が貧しいころからありましたので、作られたころは中国人観光客ではなくおそらく米軍あたりをターゲットにしていたと思われますが、他はみな中国系富豪がターゲットです。まだ東南アジアにカジノが少なく、中国本土が今ほど経済力を持っていなかったころでも、マレーシアのカジノはシンガポールやマレーシアで富を事実上占めていた中国系富裕層が週末になると集まる場所でしたし、マカオは香港やインドネシア、フィリピンの経済を牛耳っていた中国系富裕層を吸引していました。そして1990年代後半からの中国本土の驚異的な成長とともに、大量の富裕層が本土からマカオや東南アジアの数少ないカジノを席巻し、それを見たシンガポールやマニラが中国本土の富裕層好みのカジノを2000年代に企画し、今になって結実しているわけです。中国系の人、どんなに金持ちになっても博打好きなんだよね。

 

ギャンブル中毒対策は必要なのか

 中国人富裕層がターゲットとあらば、基本的にギャンブル中毒対策はさほど必要ありません。

 カジノとか言うと、想像力が乏しい日本の有識者は、すぐパチンコとか思い出して、貧困層のギャンブル中毒対策が必要とかいうのですが、大丈夫、貧困層の中高年はすでにパチンコで、また若者はFXでギャンブル中毒になっていますから、いまさら対策は必要ない、というかもう打つ手はありません。対策経費は無駄です。貧困層は、カジノが想定していない客で、せいぜい入口のスロットマシンで有り金すっておしまいなのですが、スロットならすでに街場のパチンコ屋にあるでしょ。入場料を取られてまでカジノにくる必要はありません。

 そして、大王製紙の元オーナー社長のような人がギャンブルでお金をすって会社を手放すようになるのは、これは自業自得で対策は不要ということで、大半の有権者は合意できるのではないでしょうか?

 というわけで、この辺の政策もたいへん新自由主義的で、要は身を持ち崩す奴は自己責任ってわけです。小池知事や橋下氏が好きそうな発想ですね!

 

ところでネトウヨとカジノ?

 ちなみに、小池知事や橋下氏を支持しているとよく目されるネトウヨの人たちは、パチンコは半島系だから嫌いでカジノ反対というようなことをよく述べるのですが、小池知事や橋下氏は、このような意見は歯牙にもかけていないということも、このカジノ政策を見ればわかります。

 もう一つ、ネトウヨの人たちは、中国人に頭を下げるのも大嫌いなはずですが、カジノを作るってことは、上記のとおり、中国系富裕層にかしずいてサービスするってことですので、これまた、このようなネトウヨの志向は完全無視されているということもよくわかります。

 要は、小池知事や橋下氏に対するネトウヨのラブコールが仮にあるとしても、それは基本的に単なる片思いだってことです。

 

これからどうなる?

 さて、こういう思考的背景を持つカジノ政策ですが、これから前進するのでしょうか。私はすると思います。上記のような事柄は、実は例えば民進党の政策形成のメインストリームである大企業ホワイトカラー勤労者から見ても別に違和感ない世界だからです。カジノに忌避感を感じているのは、むしろ貧困層に隣接している人たちの感覚、例えば最近話題の社会の底辺の人とは関わってはいけません|アッキーの雑談ブログあたりへの共感にみられるメンタリティであって、その辺は時間をかけて説得するとともに、カジノの収益を一定程度配分するようにすれば、最後は落ち着くものです。

 何より、アベノミクスの基本的な発想は、上記に限りなく近いものです。金融緩和がその主力であるように思われていますし、実際経済的インパクトで目立つのは金融緩和だったわけですが、一方で緊縮財政と財政収支への配慮は言うまでもなく、規制緩和、自己責任というのもアベノミクスに通底するもう一方の考えです。

 とすれば、もう統合リゾート法案自体、何年も待たされているわけですから、そろそろ、そして規制緩和アベノミクスの三本目の矢)に向けての突破口として、カジノ、そろそろ実現に向けて大きく進むんじゃないかと思っているのですが、どうなることやら。

 

(参考図書

 

熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録

熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録

 

 

ギャンブル依存国家・日本 パチンコからはじまる精神疾患 (光文社新書)

ギャンブル依存国家・日本 パチンコからはじまる精神疾患 (光文社新書)

 

 

 

 

 

*1:今や生活の党は、山本太郎と組んでしまっているのが大変趣深いと思いますが。